厄介な存在

 私には歳の離れた妹がいる。妹は末っ子でもある。歳をとってからの女の子ということで、両親、特に父はそれこそ目に入れても痛くないほど可愛がっていた。

 屈託なくおねだりしたり、生意気な物言いをしたり、そのどれもが可愛くかんじられていたようだ。

 幼い時から親に心の距離を感じていた私は、物をねだることなんてまずなかったし、いつも聞き分けが良かったから、手がかからない反面、つまらない子に思われていた。

 幼稚園に入る前の妹が欲しがると、その足で父は自転車を買いに行ってしまった。

 私が自転車を買ってもらえたのは、中学生になってからで、しかもそれは母親と兼用のママチャリだったから、私は殆ど乗ることはなかった。

 幼い頃より甘やかされて、可愛がられて、何をしても肯定されて育った妹は、生意気でわがままな娘に育った。

 家の中ではお姫様だった妹は、外の世界でも当然お姫様扱いを受けて然るべきと、頭のどこかで思っていたんじゃないかな。

 実際は誰もお姫様扱いしてくれないし、意地悪な女友だちもいるし、妹は徐々に複雑な性格になっていった。

 一番親身になってくれる家族の心配やアドバイスを敵視し、妹を利用しようと言葉巧みに近づく人たちのことを信じるようになってしまった。

 耳の痛い助言は拒否するどころか、攻撃してくる始末(・・;)

 妹は、自分を受け入れてくれるように見える人を盲信しては、失望し、裏切られたと恨む。そんなことの繰り返しをしている。

 そのうち、後ろめたいことは家族に嘘で隠すようになった。

 みんなで談笑していても、二言目には、失礼だわ!と怒り出す妹こそが、家族を蔑む発言を繰り返している。

 自分が認めた人以外は、特に家族のことを、お金に汚く、隙あらば足を引っ張る輩だと口汚く罵る。

 でも、それは、妹自身がそういう人間だからなのかもしれない。妹は自分の希望を叶えるためなら、言葉巧みに、母のためになるから、お姉ちゃんのためにもなるから、などと言って私たちを巻き込んできた。

 人は、自分自身を基準に、他の人を判断するらしいから、家族に対して疑心暗鬼になってる妹本人こそが、そういう人物なのかもしれない。

 妹に罵られても、何を言ってるのかピンと来ない私や父は、ぽかんとしてしまう。唖然としていると、図星だから反論出来ないのだろうと、勝ち誇った顔で宣う。

 今でも、助けて欲しいときは、遠慮なく猫撫で声で連絡をしてくるけど、家族だから、やっぱり可愛いし、助けてしまう私と父。

 もう、みんな、妹には何も言わなくなってきた。それを自分が認められたと思って、家族に対してますます傲慢な態度を取る妹。

 妹は、私にとって、故郷みたいなものかも。即ち、遠きにありて思うもの。コロナが収束しても、ディスタンス、保ちたいと思います。