引っ越しの歴史 

今週のお題「引っ越し」

 

 一番古い引っ越しの記憶は4歳くらいの頃だ。東京駅で待っていてくれた兄からもらった、自分の体ほどもある大きなパンダのぬいぐるみを抱えて車に乗り込んだのを覚えている。

 後で父から聞いたのだが、その大きなパンダのぬいぐるみは、久しぶりに再開する妹のために兄が選んでくれたものだった。

 当時の我が家はそれほど裕福ではなく、その巨大なパンダのぬいぐるみはかなり贅沢な値段なものだった。それまでバラバラだった家族がやっと一緒に暮らせる嬉しさからだろう、父が奮発してくれたのだった。

 次の引っ越しの記憶は小学校五年生のときのものだ。引っ越し前日の夜、天井近くまで積まれた段ボールの間で寝たのが懐かしく思い出される。引っ越しは父の仕事仲間がトラックを出してくれて、私たちも含めてみんなで力を合わせて行った。

 最後の荷物を運ぶとき、トラックの荷台の空いたスペースに乗せてもらって新居まで移動した。幌こそあるものの、荷台はオープンだったので、落ちていたら大事故になると、後で両親にこっぴどく叱られた。

 確かに道中凄く揺れるので、荷台から転がり落ちないよう、奥の方で必死になっていたのを覚えている。当時でも警察に見つかっていたらまずかったんじゃないなぁ。

 そういえば、その時の引っ越しで、兄は電動鉛筆削りを壊されたんだった。手伝いのおじさんが調子に乗って兄の鉛筆削りを下から投げたけど、二階まで届かずクラッシュ(°_°)当然弁償なんて言い出してもらえず、あはははで済まされてしまった💦哀れな兄(⌒-⌒; )

 次の引っ越しは高一のときだった。新築の4LDKの戸建てだったので、私は妹と同じ部屋をあてがわれた。個室でなかったが、エアコンも付けてもらって、嬉しかったなぁ。

 この家には社会人になるまで住んでいた。兄も社会人になるタイミングで出て行った。妹だけは出たり戻ったりしていたが、10年くらい前に完全に独立してしまった。

 今はその大きな家に両親が二人だけで住んでいるのだが、生活は一階だけで済んでいる。数年前にみんなで片付けてなんとか一部屋だけは人が泊まれるように整えた。2階の二部屋と庭の大きな物置きはモノでぱんぱんだ。家族が減ったらさっさと小さい家に引っ越した方が後々楽なのかも知れない。

 こうして振り返ってみると、家族の引っ越しの歴史は、父の経済力の歴史にも思えてくる。だんだん広く大きくなる家。どんどん増える荷物。引っ越しのたびに買い替える家具たち。ますます快適になる家のインフラ。そうしたモノを父は一人で支えてきたのだ。

 今でも大きく強い父だが、確実に歳をとり、体も老いてきている。もう、大きな何かをその肩から下ろして、そろそろ自分の為に残りの時間をつかってもらいたい。切にそう願ってやまない。